大切な人26
あくまで、フィクションです。実際の登場人物や団体及び法律等は関係ありません。
パラレルです。
蓮と社さんの会話
パラレルです。
蓮と社さんの会話
この感情にどんな名前を付ければいいのか…いままで、彼女以外を、こんなふうに思った事はない…
大切な人26
―――LMEの地下駐車場
「今日は送ってくれなくてもよかったのに・・・お前、京子ちゃんのもとに早く帰りたかっただろ?」
「・・・・・・」
「連…?おい・・・まさか・・・帰りたくないなんて言わないよな?」
「・・・帰りたくないわけではないです・・・ただ、少し気持ちを落ち着ける時間が欲しかっただけですよ」
苦笑いをしながら、社さんの質問に答えた。あのまま帰って勢いのままに、京子に問い質せば、必ず俺は彼女を傷つける。いや、どんな行動をとってしまうかわからない…だから落ち着く時間がほしかった。
「大丈夫です。大分落ち着きましたから」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。心配性ですね(クス)」
「そうか。ならいいんだ。しかし、連。これだけはいわせてくれ」
「何です?」
「あ~~」
「?」
「そのな……何があっても理性だけは手放すなよ」
「!!!手放しませんよ!!何を言っているんですか!!」
この人は真剣な顔で何を言うのかと思えば、あろうことか理性を手放すなって、何ですかそれは!!
大体、俺の周りの大人は昔っから、どうして俺に向かってその手のことばかりいってくるんだ!俺が京子を傷つけるようなまねをするわけないだろうが!
俺が思考のうずにはまっているとその様子を社さんがジッと見ていた。そこにからかいの色はなく、本当に俺たちのことを案じているのがよくわかり、血の上っていた俺の頭の中はスッと冷えた。
「連。いい加減に自覚しろ。そうしないと、大事なものはすり抜けていってしまうぞ」
怒鳴るでもなく、静かに俺に告げた。社さんの言葉が、繰り返し、繰り返し、頭に響く…
「自覚……」
「お前のそれは、兄妹の範疇を超えてるんだよ。幼馴染が出てきた以上、お前たちが血が繋がっていないなんてことはすぐに噂になるぞ。そうなった時に一番被害を受けるのは、女の京子ちゃんだ。きっと根も葉もない好奇の目にさらされることになる」
「なっ!京子をそんな目には―――
「お前がどんなにがんばったって、世の中はゴシップネタが好きなんだよ。本当に守りたいなら、目を逸らさずにちゃんと自分の気持ちに向き合え」
でも、社さん。それに目を向けたら、何かを失いそうで…動けなくなるんです…その何かが、京子だったら俺は――
眉間にしわを寄せ、無意識に拳を強く握りしめている俺に、ことさら明るい声で社さんが話を続けた。
「まあ、大げさに言ったが、お前達が血のつながらない兄妹なのは、芸能界では公然の秘密だから、この業界の人間は大丈夫だと思うが…問題は一般人だよなぁ~。お前達2人のファンは知ってるから、それほど騒がないだろうけど…こうなってくると、お前達がおおっぴらにしてたのが幸いしたな。最初はもう少し隠せよと思ってたが…」
「そうですね。『あの』幼馴染が騒いだところで、『みんな知っている事だ。それがどうした』となりますからね。京子の案を採用しておいてよかったです」
もしかしたら、京子は『アノ』幼馴染がこの業界に来る事を予想していたのかも知れない。だから、芸能界にデビューする事を渋ったのかも…
「京子ちゃんは、いつかこうなる事を予測していたのかな?」
顎に手を当てて考え込んでいた社さんも同じ考えに行き着いたみたいだ。
「『彼が』というわけではなく、遅かれ早かれ誰かが記事やニュースにするでしょう。この件でゴシップネタにされない様に、少しずつ浸透させる方を選んだんでしょうね」
「何というか…血がつながってないのに、社長を彷彿させる手腕だな…義理とはいえ親子だったんだな…(-_-;)」
「それ、俺の父の前では言わないで下さいね。結構気にしてるんで…」
「それって…社長と京子ちゃんが似てる事か?」
「ええ。『自分の方が親子歴が長いのに、どうして社長と似ていて、自分とは似ていないんだ!!』と拗ねてしまった事があったんです。しかも、その時社長が勝ち誇った顔をしたもんだから、収拾つかなくなりまして…」
俺はその時の事を思い出し大きくため息をついた。社さんも少し想像したのだろう、顔が少し引き攣っていた。一度社長と、父(御忍びなので変装済)とのやり取りを見ているから、この反応も当然と言えば当然だ。仕方ない。
「まあ、その時は買い物に行っていた京子が帰って来て、父の好物を大量に作ってご機嫌を取ってくれましたから、おさまったんですが…ハッキリ言って二度と見たくないですね」
「そ、そうか…(ホロリ)お前…苦労してたんだな」
「どういう意味ですか「してたんだな」って!!」
「いや、お前何でもそつなくこなすから、苦労するイメージがどうも繋がらなくてな」
「俺だって、どうにもならないことぐらいありますよ。現に、こんな話をしているでしょうが、いま!」
「そうだな。恋愛経験豊富そうなのに、実はまともな恋愛経験がないなんて…(ハア)お前、濃い恋愛ドラマのオファが来たらどうするんだ。経験がないので演技できませんなんて言えないぞ」
「仕事の内容次第では受けますよ」
「止めとけ。社長もきっと止めるに決まってる」
「どうしてですか!!大丈夫ですよ。出来ます。演技して見せます!」
「…演技の素人の俺でも止めておいた方がいいと思うんだから、愛をうたっている社長が止めないはずないだろう。今度、機会があったら社長に聞いてみろよ」
「……わかりました」
「(あ~、納得してないな~これは。変なとこ意地張るからな~蓮は。まあ、社長と話したら少しは思い当たることも出て来るだろう。うまく言ってくれれば、例のドラマの話は流れてくれるはず…20年前のアノドラマのリメイク版のオファーの話なんて、今は聞かせられないよな…)話がそれたから戻すけど、京子ちゃんと今日はゆっくり話せよ。明日は久しぶりに2人共、一日中お休みなんだから」
「はい。わかりました」
本当に久しぶりに一日お休みがとれたのに、今言われるまで忘れていた。本当に追い詰められているな…こんなに追い詰められるのはいつぶりだ。帰るまでに気持ちを立て直さないと…折角の休みなんだ。出来れば京子と二人っきりでゆっくり過ごしたいし…
「じゃ、ありがとう。お疲れ様、蓮」
「はい。お疲れ様です」
挨拶を交わし、車を降りた社さんを見送って、駐車場を後にした。
京子の事をどう思っているかなんて、改めて考えた事なんかなかった…
俺はただ、彼女が大切で、失えない人だ。彼女がいなくなるなんて考えたくもない!
でも、この感情にどんな名前を付ければいいのか…いままで、彼女以外を、こんなふうに思った事はない…だから…くらべようがないんだ…
まだ、答えの出ない気持ちを抱えて、俺は京子の待つマンションへ車を走らせた。
つづく
2011-05-09
社さんを出すと、蓮をいじりまくります。「理性だけは手放すなよ」社さんの名言を入れてみました(笑)
大切な人26
―――LMEの地下駐車場
「今日は送ってくれなくてもよかったのに・・・お前、京子ちゃんのもとに早く帰りたかっただろ?」
「・・・・・・」
「連…?おい・・・まさか・・・帰りたくないなんて言わないよな?」
「・・・帰りたくないわけではないです・・・ただ、少し気持ちを落ち着ける時間が欲しかっただけですよ」
苦笑いをしながら、社さんの質問に答えた。あのまま帰って勢いのままに、京子に問い質せば、必ず俺は彼女を傷つける。いや、どんな行動をとってしまうかわからない…だから落ち着く時間がほしかった。
「大丈夫です。大分落ち着きましたから」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。心配性ですね(クス)」
「そうか。ならいいんだ。しかし、連。これだけはいわせてくれ」
「何です?」
「あ~~」
「?」
「そのな……何があっても理性だけは手放すなよ」
「!!!手放しませんよ!!何を言っているんですか!!」
この人は真剣な顔で何を言うのかと思えば、あろうことか理性を手放すなって、何ですかそれは!!
大体、俺の周りの大人は昔っから、どうして俺に向かってその手のことばかりいってくるんだ!俺が京子を傷つけるようなまねをするわけないだろうが!
俺が思考のうずにはまっているとその様子を社さんがジッと見ていた。そこにからかいの色はなく、本当に俺たちのことを案じているのがよくわかり、血の上っていた俺の頭の中はスッと冷えた。
「連。いい加減に自覚しろ。そうしないと、大事なものはすり抜けていってしまうぞ」
怒鳴るでもなく、静かに俺に告げた。社さんの言葉が、繰り返し、繰り返し、頭に響く…
「自覚……」
「お前のそれは、兄妹の範疇を超えてるんだよ。幼馴染が出てきた以上、お前たちが血が繋がっていないなんてことはすぐに噂になるぞ。そうなった時に一番被害を受けるのは、女の京子ちゃんだ。きっと根も葉もない好奇の目にさらされることになる」
「なっ!京子をそんな目には―――
「お前がどんなにがんばったって、世の中はゴシップネタが好きなんだよ。本当に守りたいなら、目を逸らさずにちゃんと自分の気持ちに向き合え」
でも、社さん。それに目を向けたら、何かを失いそうで…動けなくなるんです…その何かが、京子だったら俺は――
眉間にしわを寄せ、無意識に拳を強く握りしめている俺に、ことさら明るい声で社さんが話を続けた。
「まあ、大げさに言ったが、お前達が血のつながらない兄妹なのは、芸能界では公然の秘密だから、この業界の人間は大丈夫だと思うが…問題は一般人だよなぁ~。お前達2人のファンは知ってるから、それほど騒がないだろうけど…こうなってくると、お前達がおおっぴらにしてたのが幸いしたな。最初はもう少し隠せよと思ってたが…」
「そうですね。『あの』幼馴染が騒いだところで、『みんな知っている事だ。それがどうした』となりますからね。京子の案を採用しておいてよかったです」
もしかしたら、京子は『アノ』幼馴染がこの業界に来る事を予想していたのかも知れない。だから、芸能界にデビューする事を渋ったのかも…
「京子ちゃんは、いつかこうなる事を予測していたのかな?」
顎に手を当てて考え込んでいた社さんも同じ考えに行き着いたみたいだ。
「『彼が』というわけではなく、遅かれ早かれ誰かが記事やニュースにするでしょう。この件でゴシップネタにされない様に、少しずつ浸透させる方を選んだんでしょうね」
「何というか…血がつながってないのに、社長を彷彿させる手腕だな…義理とはいえ親子だったんだな…(-_-;)」
「それ、俺の父の前では言わないで下さいね。結構気にしてるんで…」
「それって…社長と京子ちゃんが似てる事か?」
「ええ。『自分の方が親子歴が長いのに、どうして社長と似ていて、自分とは似ていないんだ!!』と拗ねてしまった事があったんです。しかも、その時社長が勝ち誇った顔をしたもんだから、収拾つかなくなりまして…」
俺はその時の事を思い出し大きくため息をついた。社さんも少し想像したのだろう、顔が少し引き攣っていた。一度社長と、父(御忍びなので変装済)とのやり取りを見ているから、この反応も当然と言えば当然だ。仕方ない。
「まあ、その時は買い物に行っていた京子が帰って来て、父の好物を大量に作ってご機嫌を取ってくれましたから、おさまったんですが…ハッキリ言って二度と見たくないですね」
「そ、そうか…(ホロリ)お前…苦労してたんだな」
「どういう意味ですか「してたんだな」って!!」
「いや、お前何でもそつなくこなすから、苦労するイメージがどうも繋がらなくてな」
「俺だって、どうにもならないことぐらいありますよ。現に、こんな話をしているでしょうが、いま!」
「そうだな。恋愛経験豊富そうなのに、実はまともな恋愛経験がないなんて…(ハア)お前、濃い恋愛ドラマのオファが来たらどうするんだ。経験がないので演技できませんなんて言えないぞ」
「仕事の内容次第では受けますよ」
「止めとけ。社長もきっと止めるに決まってる」
「どうしてですか!!大丈夫ですよ。出来ます。演技して見せます!」
「…演技の素人の俺でも止めておいた方がいいと思うんだから、愛をうたっている社長が止めないはずないだろう。今度、機会があったら社長に聞いてみろよ」
「……わかりました」
「(あ~、納得してないな~これは。変なとこ意地張るからな~蓮は。まあ、社長と話したら少しは思い当たることも出て来るだろう。うまく言ってくれれば、例のドラマの話は流れてくれるはず…20年前のアノドラマのリメイク版のオファーの話なんて、今は聞かせられないよな…)話がそれたから戻すけど、京子ちゃんと今日はゆっくり話せよ。明日は久しぶりに2人共、一日中お休みなんだから」
「はい。わかりました」
本当に久しぶりに一日お休みがとれたのに、今言われるまで忘れていた。本当に追い詰められているな…こんなに追い詰められるのはいつぶりだ。帰るまでに気持ちを立て直さないと…折角の休みなんだ。出来れば京子と二人っきりでゆっくり過ごしたいし…
「じゃ、ありがとう。お疲れ様、蓮」
「はい。お疲れ様です」
挨拶を交わし、車を降りた社さんを見送って、駐車場を後にした。
京子の事をどう思っているかなんて、改めて考えた事なんかなかった…
俺はただ、彼女が大切で、失えない人だ。彼女がいなくなるなんて考えたくもない!
でも、この感情にどんな名前を付ければいいのか…いままで、彼女以外を、こんなふうに思った事はない…だから…くらべようがないんだ…
まだ、答えの出ない気持ちを抱えて、俺は京子の待つマンションへ車を走らせた。
つづく
2011-05-09
社さんを出すと、蓮をいじりまくります。「理性だけは手放すなよ」社さんの名言を入れてみました(笑)
